⑦ インク詰め
刷りの工程です。
あくまで私のやり方として、参考の一つにしていただけたら幸いです。
まずインクをよく練ります。
気温によって状態がかなり変わってきますから、必要に応じて炭酸カルシウムやワニスを使って調整します。が、、、寒い日は硬いインクに対する刷りを、暑い日には柔らかいインクに対する刷りをすることで、余計なものを加えずに手加減して刷るのもありでしょう。
塩ビシートの厚いもの(5mmくらい)をスパッとカットしたもので、’しなり’を活かしてしっかりインクを詰め込みます。
(わたしは版の凹が深いので、この方法を使っていますが、浅くて繊細な版は 硬くまるめたウェスで押し込んだ方が良いです)
次は ”しなり” を活かして、凹部以外のインクをある程度取り去ります。
取り去ったインクはそのままもとのインク台に戻して また使えます。
この段階で版の図柄が見えるくらいが◎です
版上の余分なインクが少なければ少ないほど、次に使う寒冷紗や人絹が汚れません。
インクも凹部のぶんだけ詰めれば、無駄なく、うんと長持ちします
塩ビが劣化して固くなってきたり、付着したインクが固化していたら、版面を傷つけてしまうので新しいものと取り換えてくださいね。もう10年以上この方法で刷っていますが、今のところ版面を傷つけたことはありません。
次に、寒冷紗の比較的きれいな面を選び
そのなかにクシャクシャっとまわりを入れ込んでグッと握ります。
↓こんな感じです。
拭きすぎると どんどん凹部のインクを取り去るので、良い具合で人絹に切り替えます。
人絹も同じ要領でクシャクシャ、グッと握ります。
縦の筋と平行に拭き取るように動かせば、素直に凸部だけ拭き上げ 油膜をしっかり取ってくれます。
縦の筋と垂直方向に動かすと、凹部のインクを引っ張るように伸ばすので、線の周りに油分が滲んだような印象の仕上がりになります。
それぞれの持ち味を生かして、白黒はっきりカッチリの画面にするのか、油膜の余韻を残した画面にしたいのか、刷り分けることができます。
常に縦糸の方向を意識しながら拭きます。
プレートマークを拭いた後、もう一度人絹で周囲とプレートマークを馴染ませるように整えれるとなお良いです。
これで、インク詰め完了です
版を目の高さで光を当てながら角度を変えてみて
緑紫に鈍く反射するところがあれば 油膜が残っている部分だということです。
一般的な書物では このあとあい紙で油膜を取ったり、手の平の親指の付け根の丘で油膜を調節したりすると書いてありますが・・・
人絹の縦糸を使いこなせば、この後にあい紙などを使って油膜の処理をしなくとも、十分イメージに近いインクの調整ができます。
方法は、なんでもいいと思います
私としては、油膜をきっちり取るとインクと地の白がキッパリして堅さがでるので、銅版画特有の風合いとして油膜を取りすぎない方がオイシイのではないかと(笑)
その具合も、好みでどのようでもよいと思います
*刷りのポイント*
・インク → 凹部にしっかり、且つ最小の量を詰める
・寒冷紗 → 版上のインクを取り去る役目
・人絹 → 凸部のみ拭き上げる役目
・拭き加減 → お好みで自由に
【 腐蝕銅版画 制作工程 】