腐蝕銅版画 制作工程

④ニードル描画と腐蝕


いよいよ版に描いていく工程です。

 

ニードルの針で描いていくわけですが・・・ガリガリと銅板を削る必要はありません。

線を銅に刻むのは腐蝕液がやってくれますから、この段階ではグランドをはぎとるだけでOKなのです。

スルーリスルリと銅上でニードルを滑らす感じです。

ですので、ニードル針の先はピンッピンに鋭利にするよりも、先端を少し丸めた方が滑りよいです。ほんの少しだけ。ニードルの研ぎ方にも工夫してみてください。

 

(銅板を直接削っていく技法はドライポイントといって、エッチングの線には無い独特のにじみと力強さ、そして儚さを纏って魅力的です。エッチングとドライポイント両方の良さを狙ってガリガリと描画するのももちろんアリです。)

 

黒いグランドの間からオレンジ色の銅が見えて、光を反射するようならOKです。

この銅面がむき出しになっている部分だけが腐蝕液に触れて溶け去って、えぐれて、版になるのです。

 

 

グランドは熱でべたつきますから、ニードルを持つ手の下にペーパーなどを挟んで体温が伝わらないようにします。気温が高くてグランドの状態が不安定な時は、ペーパーの繊維がグランドにくっついてしまった!なんてこともありますので気を付けてくださいね。

 

描画が完了したら、腐蝕液に漬けます。

 

私は塩化第二鉄という腐蝕液を使用しています。

 

以前は硝酸が使われていたようですが、薬品の危険性や健康への配慮から、大学などの研究教育機関では塩化第二鉄にシフトしているところが多いようです。私自身、硝酸で制作した経験は数少ないです。

 

2つの薬品の主な特徴としては、

 

 

 

塩化第二鉄:垂直方向への腐食が早く進む。描画面を上に向けて腐蝕する場合は、腐蝕後に生じるカスが銅面に積もると腐蝕の進行を妨げるため定期的にカスを洗って取り除く。描画面を下に向けて腐蝕する場合は、上に向けて腐蝕する場合よりも腐蝕の進行が早く、腐蝕面は荒っぽいテクスチャーになる。茶色くて服についたらいやなかんじ、皮膚につくとかゆくてヒリヒリしてくる。

 

硝酸:接触は上下左右に腐蝕が進むため、塩化第二鉄よりも荒々しい線になる印象。腐蝕中に生じる気泡が銅に接していると腐蝕の進行を妨げるため、定期的に羽根などの軽くて柔軟な素材で描画面をなぞり、気泡を取り除く。透明なブルーで綺麗なかんじ。皮膚が溶ける。腐蝕室の換気扇の鉄まで錆びるほど危険な液体。

 

 

 

腐蝕液に漬ける時間によって凹部の深さ、つまり刷った時に紙の上に盛り上がるインクの量が決まってきます。

つまり、、、

 

①最も力強く表現したい線を描画 ⇒ 一回目の腐蝕30min

②繊細な線で表現したい線を描画 ⇒ 二回目の腐蝕30min

③最も繊細に表現したい線を描画 ⇒ 三回目の腐蝕10min

 

このように段階的な腐蝕工程で描き分けることで、①の部分は70min、②の部分は40min、③の部分は10min といったように腐蝕時間をコントロールできるわけです。

下絵の段階で、この腐蝕計画まで立てておきましょう!

描画面を下に向けて腐蝕すると腐蝕スピードはかなり早まりますので、その効果も織り交ぜると良いですね。

 

 

 

腐蝕はニードル描画だけでなく、例えばこちらの画像↓

 

左側の6枚翅の蝶をご覧ください・・・ニードルで描いた「線」ではなく、広い面積でグランドを取り去った「面」で腐蝕しているのがわかります。

 

これはディープエッヂという技法で、インクを詰めるときにはイメージの段差部分にインクが詰まり、線描とは異なる独特の効果を生み出します。

 

このディープエッヂ、おもしろくて、描画面を上に向けて腐蝕した時と、下に向けて腐蝕した時とで全く違う表情になるんです。お試しあれ^^

 

 

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